日本臨床医学リスクマネジメント学会 Japan Society of Risk Management for Clinical Medicine

『改訂第2版 医療安全管理者実務医者標準テキスト』の編集にあたって

 このテキストは,医療安全管理の実務者が,所属する医療機関の規模や機能,彼らがおかれている立場や状況に応じて,医療安全に関する基本的事項を学べるように作られた。特に,初めて医療安全管理の実務者になった者が,すぐにでも職務を遂行できるようなガイドマップであることを目指して,「標準テキスト」と名付けられた。

 初版の発刊から4 年が経過し,この間医療事故調査制度の運用もそれなりに進みつつあり,医療事故調査・支援センターによる「医療事故の再発防止に向けた提言」も出されてきた。また,医療法をはじめとした法令の改正があり,特定機能病院における医療事故の教訓から,第7次・第8次医療法改正で,医療法人のガバナンスの強化や特定機能病院の承認要件の見直しなど,医療安全管理体制の充実が図られている。この改訂版では,これらの最新の動向を盛り込むようにした。また,初版は「テキスト」であろうとするあまり,重要な語句や図が筆者ごとに繰り返し説明されているきらいがあった。そのため,この改訂第2版では,繰り返し出てくる語句や図は,「用語の解説」でまとめて解説し,総ページ数を減らしてより読みやすくするというコンセプトのもとで編集された。章立ても変更し,総論では,「医療安全マニュアルの作成とその改訂」「産業界の安全管理の歴史」「診断エラー」が新たに加えられた。また,各論の第1章「医療安全管理者の実務」と第2章「医療事故防止に対する院内の取り組み」では,医療安全管理実務者が平時・有事に行うであろう項目を解説し,第3章「病院内の医療安全(部署別管理者の注意点)」,第4章「状況別医療安全」,第5章「重大事故発生後の対応と再発防止」では,初版でも取り上げた部署別や状況別の医療安全,重大事故発生後の対応と再発防止について,それぞれの項目を増やして解説した。第6章「災害時におけるリスクマネジメント」では,災害が起こったときにどのように対応すればよいか,医療安全管理実務者にとって,特に必要な知識に絞って解説した。

 今回も初版と同様,現在わが国の第一線で活躍している医療安全の研究者,実務者の皆さまに執筆いただくことができた。そのため,読者は,どの項目を読んでも,医療安全のセミナーを受講したかのような知識の充実や刷新を感じていただけると思う。まさに,改訂版も「標準テキスト」であると言えよう。

 本テキストが,現在のこの困難な状況においてなお,医療安全の実務を担っておられる実務者の皆さまにとって,業務の一助となれば幸いである。

 

 2021年1月

 

 

日本臨床医学リスクマネジメント学会

改訂テキスト編集委員会

委員長 浦松 雅史

 

 

日本臨床医学リスクマネジメント学会 Japan Society of Risk Management for Clinical Medicine
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