日本臨床医学リスクマネジメント学会 Japan Society of Risk Management for Clinical Medicine

シンポジウム「杏林大学病院割りばし事件裁判に学ぶ」

医療者と法律家の相互理解から、医療事故と冤罪事件の再発防止のために

 

 国の医療事故調査制度の発足後も、深刻な訴訟や訴追は後を絶ちません。割りばし事件は、1999年の発生ですが、救急医療における予期しない死亡は、今後も大半は、刑事手続きの対象でありえることから、割りばし事件のように、救急搬送先の医師が、過失が問われえます。そこで、杏林大学病院割りばし事件に関するシンポジウムを、日本臨床医学リスクマネジメント学会の総会の一環として開催します。

 事故調対象事例に関する具体的検討が難しいので、刑事裁判記録の検証は有意義です。福島県立大野病院事件の刑事裁判弁護人の安福謙二先生の提案により、水谷渉弁護士(当学会)が、東京地検にある膨大な裁判記録の保存と検証に努めてきました。

医療等の業務上の過失に関する裁判においては、専門家の意見・証言に基づく適正な法的判断が求められますが、検察官が、専門家の意見を十分理解しないで過失と判断することがあり、裁判上、その判断が争点になります。裁判では、専門家が、発生頻度が低い難しい事例の判断や証言を求められます。さらに、司法解剖の情報開示・医療専門性の問題、鑑定証人の専門性・姿勢の問題に加えて、捜査機関の専門家に対する捜査にも問題があります。この点、割りばし事件は、刑事手続、刑事裁判、専門家証人に関する問題の縮図です。その問題点は、冤罪事件の問題と、本質的に同じです。

 本件の裁判記録と関係者のお話をもとに医療者と法律家が議論を尽くせば、刑事裁判、刑事手続きに活かせる途もきっと見つかるはずです。本シンポジウムでは、割りばし事件の鑑定証人であった当学会の堤晴彦先生(基調講演)、有賀徹先生に加えて、元杏林大学耳鼻科教授の長谷川誠先生、元弁護人の棚瀬慎治先生にお話をうかがいます。加えて、冤罪事件の裁判に実績豊富な法律家4名(元裁判官2名、弁護士3名、法科大学院教授1名、重複あり)も参加されます。吉田謙一(当学会)は、法医の立場から、司法解剖と刑事手続きの問題点についてご紹介します。

 本シンポジウムは、割りばし事件の関係者の記憶と問題意識が風化しないように、医療者と法律家の熱い討論を通じて、医療裁判、刑事裁判、刑事手続き(司法解剖を含む)、さらに、医療事故調査のよりよいあり方を見出し、社会に発信することを目指しています。

 

 

    平成30年3月吉日

  日本臨床医学リスクマネジメント学会有志一同  

 

◆詳細(申し込みなど)

第16回学術集会WEBSITE

 

◆日時

平成30(2018)年5月26日(土)午後1時~5時 場所:豊洲シビックセンター

 

◆プログラム

1.割りばし事件第一審まで

座長:有賀徹(本件証人、救急医)、水谷渉(弁護士、日医総研研究員)

指定発言:水谷渉「裁判記録の重要性」「事件概要と争点」

指定発言:吉田謙一(法医)「司法解剖と刑事手続き」

指定発言:長谷川 誠(被告医師の元上司)「当事者としての医療者」

講演:棚瀬慎治(本件弁護人)「第一審16名の証人達」「今も続く刑事訴追のリスク」

 

2.割りばし事件控訴審

座長:吉田謙一、水谷渉

基調講演:堤晴彦(本件証人、救急医)「死因と証人について」

指定発言:有賀徹(本件証人、救急医)「救命可能性について」

指定発言:水野 智幸(元裁判官)「2つの判決文を読んで」

指定発言:安福謙二「一審と控訴審の判決文の違い」

質疑応答

 

3.総合討論…「冤罪防止:証人に求めること、裁判官に求めること」

座長:安福謙二(大野病院事件弁護人)、堤晴彦

指定発言:吉田謙一「死因を正しく活かす」

講演:木谷明(元裁判官)「裁判官に求めること」

指定発言:今村核(「冤罪弁護士」)「証人に求めること」

指定発言:伊東秀子(弁護士、恵庭OL殺人事件)「証人に求めること」

 全員で総合討論

 

 

◆参考文献

判例時報2301号 特集“刑事医療事故訴訟”第4弾「杏林大学割りばし事件」に

堤晴彦先生、奥田保先生(代表弁護人)の論文、及び判決全文が掲載されています。

[外部サイト]判例時報社 判例時報2301号

                バックナンバーの購入(2301号を購入可能です)

 

◆参加者のプロフィール

有賀 徹 救急医、労働者安全機構理事長、元昭和大学医学部付属病院長。

伊東秀子 弁護士。元国会議員。恵庭OL殺人事件(冤罪事件)主任弁護人。

今村核 「冤罪弁護士」著者。科学鑑定の活用実績豊富な弁護士。

木谷明 「法律家の良心」と呼ばれる弁護士。最多の無罪判決を書いた元刑事裁判官。元法政大学法科大学院教授。

堤晴彦 救急医。埼玉医科大学医療センター長。

長谷川誠 杏林大学耳鼻咽喉科元教授。

水谷渉 弁護士、日医総研研究員。福島県立大野病院事件弁護人。

水野智幸 法政大学法科大学院教授。成田チョコレート缶事件無罪判決の元裁判官。

安福謙二 弁護士、福島県立大野病院事件代表弁護人。「なぜ、無実の医師が逮捕されたのか」著者。

吉田謙一 法医、東京医科大学教授(東大名誉教授)。「事例に学ぶ法医学・医事法」著者。

 

 

日本臨床医学リスクマネジメント学会 Japan Society of Risk Management for Clinical Medicine

 本件の裁判記録と関係者のお話をもとに医療者と法律家が議論を尽くせば、刑事裁判、刑事手続きに活かせる途もきっと見つかるはずです。本シンポジウムでは、割りばし事件の鑑定証人であった当学会の堤晴彦先生(基調講演)、有賀徹先生に加えて、元杏林大学耳鼻科教授の長谷川誠先生、元弁護人の棚瀬慎治先生にお話をうかがいます。加えて、冤罪事件の裁判に実績豊富な法律家4名(元裁判官2名、弁護士3名、法科大学院教授1名、重複あり)も参加されます。吉田謙一(当学会)は、法医の立場から、司法解剖と刑事手続きの問題点についてご紹介します。

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