第15回学術集会ピックアップ
なぜ、無実の医師は逮捕されたのか 5/28(日)13:40~
○合同教育講演
「なぜ、無実の医師は逮捕されたのか~専門的見解に対する言われなき不信と反発~」
2017年5月28日(日) 13:40~14:40
安福 謙二(安福法律会計事務所)
【ご案内】
2004年、予想されなかった胎盤の異常のため出血死した産婦の治療を担当した医師が、警察に逮捕された「福島県立大野病院事件」をきっかけに、全国に「産科医療崩壊」の衝撃が走りました。この事件は、産科に限らず、医療事故が発生した時、医療チームの誰もが責任を追及される危険性を今に伝えています。そして、事故調査に医療関係者がどう対処すべきかを問い続ける原点となっています。
この事件の刑事裁判において、弁護団を率いて、担当医師の無罪判決を勝ち取った安福謙二弁護士が、「なぜ、無実の医師は逮捕されたか?」という本講演のタイトルと同じご著書(方丈社)を昨年、発表され、注目されています。
ご講演の中でタイトルにかかげた疑問に答えられるのを拝聴しながら、医療事故がわが身に起こったときどうなるか考えてみませんか?
患者の声と臨床実践〜安心安全の医療を目指して〜 5/27(土)15:30~
○パネルディスカッション(学会企画)
患者の声と臨床実践〜安心安全の医療を目指して〜
2017年5月27日(土)15:30 〜 17:00
座長:中島勧(東京大学医学部附属病院 医療安全対策センター)
1.患者の声を聴き続けること
内田れい子(帝京大学医学部附属病院)
2.救命救急医療での看取りと患者家族との関わり
櫻井淳、他 (日本大学医学部救急医学系救急集中治療医学分野)
3.がん領域における患者との対話の重要性〜診療・研究からがん対策へ〜
渡邊清高、他 (帝京大学医学部内科学講座 腫瘍内科)
4.医療における意思決定支援と「患者の声」〜医療の安心・安全に向けての医療倫理学からの応答〜
勝井恵子、他 (東京大学大学院医学系研究科 医療安全管理学講座)
【ご案内】
医療従事者が医療安全管理を考える時、実際に起きた有害事象や、未然に防げたヒヤリハット事例などが参考にされることが多いが、そこに医療を受ける患者の声を取り入れる試みは意外に少ない。臨床医学リスクマネジメント学会広報企画委員会では、これまで取り上げられることの少なかった患者の声を活かす試みが、医療安全の新たな柱になりうるのではないかと考えた。
最も情報に富んだ患者の声として、医療に関する苦情が病院内外にあふれている。患者の声を聞くための患者相談窓口の設置が本格的に始まったのは、地域(病院外)では、平成18年の都道府県、保健所設置市区等の医療に関する苦情相談窓口(医療安全支援センター)の設置、病院内では平成24年の患者サポート体制充実加算(医療対話推進者)が始まった頃である。患者相談窓口の制度化とともに、医療の苦情相談に対応する人材育成が始まり、患者・家族と医療者の「対話」の場をつくる取り組みが広がっている。
全国380箇所にある医療安全支援センターに寄せられる苦情相談は1年間で10万件に及び、苦情相談の1位は「医療行為・医療内容」、2位は「医療者の接遇」であり、これは10年間変わっていない。医師は臨床実践の場でどのように患者の声を聴き診療に活かしているのか、患者との信頼関係をどのように作っているのか。
本セッションでは、様々な場面で「患者の声を聴いて」いる臨床家の経験を聴きながら、最も基本となる臨床実践の中で「患者の声を聴くことの意味」を、会場の皆様と共に考える機会としたい。
医療の質・安全向上のために院内弁護士ができること 5/28(日)15:50~
〇シンポジウム
医療の質・安全向上のために院内弁護士ができること
2017年5月28日(日)15:50 〜 17:50
座長 大嶽浩司(昭和大学医学部麻酔科学講座)
吉田 謙一(東京医科大学法医学分野)
1.訴訟支援
越後 純子(虎の門病院 医療安全部)
2.インフォームド・コンセント
北野 文将(名古屋大学医学部附属病院 医療の質・安全管理部)
3.インシデント・アクシデント等の各種調査に関与して感ずること
水沼 直樹(亀田総合病院)
4.ハイリスク症例検討会等における法的見解の提供
武市 尚子(東京女子医科大学 医療安全・危機管理部/法務部)
【ご案内】
医療従事者にとって弁護士という職種を意識する機会は、医療に不信を持つ患者の「弁護士に相談します」という言葉によることが多いのではないだろうか。そのうちごく一部で実際に弁護士が登場し、医療従事者も弁護士に相談する必要が生じて初めて、患者側と医療機関側の弁護士がいるに気付くという人も多いと思われる。これに加えて医療現場では、紛争以外にも法的判断や事実調査を必要する場面が多く、より広い領域で弁護士の関与が必要になってきている。
ところで、医療機関も多くの法律的課題を抱えている。一般に、大企業における法律実務は,契約関連、新規プロジェクト、人事懲戒問題、労務問題等多岐にわたり,企業内の専属弁護士(インハウスローヤー)がこれらに対応している。しかし,医療機関においては、これらに加え、医療安全、医療事故対応などがあるが,医療機関にはまずそのような内部専属弁護士は存在しない。
本シンポジウムにおいては、本邦に15人程度しかいないといわれる医療機関専属の内部弁護士に演者として登壇していただき、その仕事ぶりをみながら,医療機関が内部から法的助言を受けるメリットが何か、顧問弁護士には難しい内部弁護士ならではの視点は何か、法律家から観た医療者の危険な常識は何か等、リスクマネジメントを考えていきたい。
医療事故当事者に対するメンタルケア・ピアサポート 5/28(日)14:50~
〇教育講演
医療事故当事者に対するメンタルケア・ピアサポート
2017年5月28日(日)14:50~15:50
大磯義一郎(浜松医科大学医学部 医療法学)
【ご案内】
1999年に米国医療の質委員会が「to err is human(人は誰でも間違える)」と報告して以降、医療安全対策において大きなパラダイムシフトが生じた。すなわち、「人が間違えることで事故が起きる」とするパーソンアプローチから、「システムの不調和や脆弱性によりエラーが誘発される」と考えるシステムアプローチへと医療安全の考え方が一変した。医療事故当事者は、医療事故の「加害者」ではなく、医療現場の脆弱性を明らかにしたにすぎないと考えられるようになったのである。
この観点で行われる医療安全を目的とした医療事故調査では、医療事故当事者から話を聞くことは、犯人捜しではなく、医療現場の脆弱性などの背景要因を探究するために行われることになる。
しかし、我が国では、未だにマスメディア及び刑事司法がパーソンアプローチから脱却できておらず、医療事故の最終行為者となった若い医療従事者は、社会的非難の的となる上に、刑事責任追及リスクも負うことになり、その心的負担は極めて大きい。
そもそも、医療事故に遭遇した医療従事者は、すべからくその結果につき心的外傷を負っている。しかし、わが国において、こうした「第二の被害者(Second Victim)」としての現場医療従事者に対するメンタルサポート体制が整っているとはおよそいい難いというのが現状である。
本講演では、米国で2000年に開始された医療事故に遭遇した患者・家族・医療従事者のサポートおよび啓発活動と、2006年に作られたハーバード大学付属Brigham and Women’s Hospitalでのピアサポートチームを紹介し、我が国における医療事故当事者に対する目指すべきメンタルサポート体制について検討したい。